個人のインフレ対策は何をすればいい?6つの手段を「100万円が5年でいくらになるか」で比べた
相談者
あかりこの記事でわかること
- この5年、物価は上がり続けた。普通預金はほとんど動かず、置いていかれた
- 金・株式・マンションはいずれも物価を上回った。伸び幅は記事中の早見表のとおり
- 国の利上げでは預金は守れない。先に上がるのは借りる側の金利
- 6つの手段は「何を守れて、何を守れないか」がそれぞれ違う
- 借りたお金で買えるのは、6つのうち不動産だけ
まずは早見表。この5年で何が物価に勝ったか
インフレ対策というと身構えますが、やることは1つです。今、現金・預金で持っているぶんのうち、当面使う予定のない分を、物価と一緒に値上がりするものに移す。それだけです。
預金のままだと、金額は変わらないのに買えるものが減っていきます。だから「減らないもの」ではなく「物価と一緒に上がるもの」に移す必要があります。
個人が選べるのは、株式・投資信託、金、外貨、個人向け国債、不動産、REITの6つです。万能なものはなく、値上がりに強いものは値動きも大きく、元本が減りにくいものは物価に追いつきにくい、という関係にあります。

金(ゴールド)
- 5年後の金額
- 283万円
- 倍率
- 2.83倍
- 物価(112万円)と比べて
- 大きく上回った
株式(TOPIX)
- 5年後の金額
- 189万円
- 倍率
- 1.89倍
- 物価(112万円)と比べて
- 上回った
外貨(米ドル)
- 5年後の金額
- 151万円
- 倍率
- 1.51倍
- 物価(112万円)と比べて
- 上回った
不動産(マンション)
- 5年後の金額
- 142万円
- 倍率
- 1.42倍
- 物価(112万円)と比べて
- 上回った
普通預金
- 5年後の金額
- 約100万円
- 倍率
- 約1.00倍
- 物価(112万円)と比べて
- 置いていかれた
(同じものを買うのに必要な額)
- 5年後の金額
- 112万円
- 倍率
- 1.12倍
- 物価(112万円)と比べて
- ─
あかりでは何を基準に選ぶのか。伸びた順ではなく、自分が何を守りたいかから決めます。値上がりを狙うのか、元本を減らしたくないのかで、選ぶものが変わります。

国の利上げでは、預金は守れない

相談者
あかり用語の意味
- 政策金利せいさくきんり
- 日本銀行が決める金利の基準です。2026年6月に引き上げられ、7月の会合では据え置かれました。
預金の金利は、この4年で大きく上がりました。倍率だけを見れば劇的です。ところが物価も同じ期間に上がっていて、上がり方の桁が違います。

物価高への給付金は、受け取ったその年の家計を助けます。ただし物価の上昇は毎年続きます。
あかり物価と預金金利は、これだけ離れている

物価の上昇(消費者物価指数 総合)
- 年率
- +1.9%
- 時点
- 2026年7月
定期預金の金利(1年・1千万円以上)
- 年率
- 0.447%
- 時点
- 2026年8月
普通預金の金利
- 年率
- 0.306%
- 時点
- 2026年8月
一方で、給料は伸びています。厚生労働省の毎月勤労統計によると、直近の実質賃金は前年同月を上回りました。物価を差し引いても手取りの価値が増えている状態です。
あかり何もしないと、いくら減るのか

2020年
- 消費者物価指数
- 100.0
- 100万円で買えるもの
- 100.0万円
2022年
- 消費者物価指数
- 102.3
- 100万円で買えるもの
- 97.8万円
2024年
- 消費者物価指数
- 108.5
- 100万円で買えるもの
- 92.2万円
2026年
- 消費者物価指数
- 113.2
- 100万円で買えるもの
- 88.3万円
あかりだからといって、全額を投資に回す必要はありません。急な出費や収入が止まったときに使うお金は、値動きのないところに置いておく必要があります。目安は生活費の半年分です。
あかり個人ができるインフレ対策6選

ここからが本題です。6つの手段を、同じ順番・同じ項目で並べます。
① 株式・投資信託
守れるのは、じわじわ続く物価の上昇です。企業は仕入れ値が上がれば売値を上げるため、業績が物価に合わせて増えていきます。

2020年
- 株式(TOPIX)
- 100
- 物価
- 100
2022年
- 株式(TOPIX)
- 105
- 物価
- 102
2024年
- 株式(TOPIX)
- 154
- 物価
- 109
2025年
- 株式(TOPIX)
- 189
- 物価
- 112
5年でどうなったかは早見表のとおりです。向いているのは、長く使う予定のないお金がある人です。
② 金(ゴールド)
守れるのは、通貨そのものの値打ちが下がる場面です。金は世界共通で価値が認められているため、円が弱くなると円建ての価格が上がります。

2020年
- 1グラムあたり
- 6,122円
- 2020年を100として
- 100
2022年
- 1グラムあたり
- 7,649円
- 2020年を100として
- 125
2024年
- 1グラムあたり
- 11,718円
- 2020年を100として
- 191
2025年
- 1グラムあたり
- 17,302円
- 2020年を100として
- 283
5年の伸びは6つの中でいちばん大きくなりました。向いているのは、資産の一部を分散させたい人です。
③ 外貨
守れるのは、円が安くなる場面です。2026年7月末の時点で、円は数年前より安くなっています。
守れないのは、為替が逆に動いたときです。円が強くなれば、外貨のままでも円に戻すと目減りします。
向いているのは、資産が円だけに偏っている人です。日本に住み、円で給料をもらい、円で貯金しているなら、資産の一部を別の通貨にしておく意味があります。
④ 個人向け国債
守れるのは、元本です。国が発行し、途中で解約しても元本は戻ります。値下がりの心配がない点が、ほかの5つと決定的に違います。
基準金利
- 年率
- 2.11%
利率(税引前)
- 年率
- 2.06%
利率(税引後・税率20.315%で計算)
- 年率
- 約1.64%
物価の上昇(2026年7月)
- 年率
- 1.9%
税引前の利率だけを見れば物価を上回ります。ところが税金が引かれると、物価を下回ります。
向いているのは、数年以内に使う予定があるお金を、預金より少しでも増やしたい人です。
⑤ 不動産
守れるのは、長期の物価上昇です。ただし「どの不動産か」で結果が大きく変わります。上の表のとおり、同じ不動産でもマンションの1部屋と土地では倍近い差がありました。

マンションの1部屋
- 2025年
- 217.8
- 15年で
- 2.18倍
家ぜんたい
- 2025年
- 144.7
- 15年で
- 1.45倍
一戸建て
- 2025年
- 120.3
- 15年で
- 1.20倍
土地
- 2025年
- 118.7
- 15年で
- 1.19倍
6つの中で不動産だけにある性質が、借りたお金で買えることです。物価が上がると、返す金額は変わらないのに、そのお金の値打ちが下がります。ただし借入は返せるかどうかで決めるもので、金額の試算は不動産の記事にまとめています。
⑥ REIT
REIT(リート)は、多くの人からお金を集めて不動産に投資し、その賃料を分配する商品です。証券口座があれば数万円から買えます。
守れるのは、不動産と同じ長期の物価上昇です。守れないのは、借入による負担の目減りです。借りているのは運用会社であって、自分ではないためです。
借入が使えるか
- 現物の不動産
- 使える
- REIT
- 自分では使えない
いくらから
- 現物の不動産
- 数百万円〜
- REIT
- 数万円〜
現金にする速さ
- 現物の不動産
- 数か月
- REIT
- その日のうち
手間
- 現物の不動産
- 管理会社に任せられる
- REIT
- 不要
あかりNISA・iDeCoは入れ物であって、手段ではない
制度の内容(2026年度時点)
- NISAニーサ
- 投資で得た利益に税金がかからない制度です。年間の投資枠と生涯の上限が決まっています(2026年度時点)。金額は下の表のとおりです。
- iDeCoイデコ
- 自分で作る年金です。掛けた金額が所得から差し引かれるため、その年の税金が減ります。ただし原則60歳まで引き出せません。
いつ引き出せるか
- NISA
- いつでも
- iDeCo
- 原則60歳まで不可
税金の優遇のしかた
- NISA
- 利益に税金がかからない(非課税)
- iDeCo
- 掛けた金額が所得から差し引かれ、その年の税金が減る(所得控除)
年間の上限
- NISA
- 360万円
- iDeCo
- 職業により異なる
NISAやiDeCoは、それ自体が投資先ではありません(いずれも2026年度時点の制度です)。中に何を入れるかは自分で決めます。上の6つのうち、株式・投資信託・REITはこの器に入れられます。
あかりよくある失敗は4つ

手段を選んだあとに起きる失敗は、いくつかの型に絞られます。どれも「知らなかった」だけで起きるもので、覚えてしまえば避けられます。
① まとまったお金を、一度に全部入れてしまう
いちばん多い失敗です。手元にある額をそのまま一度に入れてしまう。
38歳の会社員Aさんの例で考えます。金が値上がりしていると聞いて、貯めていたお金をまとめて金に替えました。ところが金の値段は、同じ年のうちでも高い日と安い日で大きく開きます。買った日がたまたま高い日だったため、しばらく含み損を抱えることになりました。
避け方は単純で、買う日を分けます。毎月1万円ずつのように決まった額を買い続けると、高い日には少ししか買えず、安い日には多く買えるので、平均するとまん中あたりの値段で買えます。
② 税金を引く前の利回りで比べてしまう
商品の説明に出てくる利回りは、ほとんどが税金を引く前の数字です。実際に手元に残るのは、そこから約20%が引かれたあとの金額になります。
40歳の会社員Bさんは、個人向け国債の利率が物価を上回っていたので「これで守れる」と考えました。ところが受け取るときには税金が引かれます。手元に残る利率で見ると、物価には届いていませんでした。
税金が引かれるのは国債だけではありません。株式でも投資信託でも、増えた分には同じく約20%がかかります。
③ 円安で増えた分を、増えた「実力」だと思ってしまう
外貨を持っていると、円安が進んだときに円に直した金額が増えます。2026年7月末の時点では数年前より円安なので、ドルを持っていた人の口座の数字は増えています。
ただし、増えたのは円に直したときの見た目だけで、持っている1ドルの中身は変わっていません。円が元の水準に戻れば、増えた分はそのまま消えます。
④「不動産はインフレに強い」を、どの物件でも成り立つと思ってしまう
不動産がインフレに強いと言われるのは、物価が上がれば家賃も上がる、という前提があるからです。ただ、この前提は全国どこでも成り立つわけではありません。
総務省の消費者物価指数で6年分を見ると、物価は大きく上がった一方、全国の民営家賃はほとんど動いていません。東京都区部は物価並みに動いていますが、全国平均は伸びていません。伸び幅は上の表のとおりです。
物価(消費者物価指数 総合)
- 伸び
- +14.2%
- 期間
- 2020年7月→2026年7月
全国の民営家賃
- 伸び
- +1.4%
- 期間
- 2020年7月→2026年7月
東京都区部の民営家賃
- 伸び
- +1.8%
- 期間
- 前年同月比(2026年7月)
全国の民営家賃
- 伸び
- +0.6%
- 期間
- 前年同月比(2026年7月)
つまり「不動産だからインフレに強い」のではなく、家賃が上がっている場所の物件だから強い、が正確です。
あかり投資より確実なのは、固定費を減らすこと

37歳のCさんは、投資の前に固定費を見直しました。投資は増えるかどうか分かりませんが、支出の削減は確実に手元に残ります。毎月の固定費をいくら減らすと、運用の利回り何%にあたるかを下の表にしました。
3,000円
- 年間
- 36,000円
- 同じ効果を出す利回り
- 3.6%
5,000円
- 年間
- 60,000円
- 同じ効果を出す利回り
- 6.0%
10,000円
- 年間
- 120,000円
- 同じ効果を出す利回り
- 12.0%
見直す順番は、金額の大きいものからです。住居費、保険、通信費、サブスクリプションの順に確認すると効率が良くなります。
あかり年代で変わるのは、待てる時間の長さ

株式や金は、途中で値下がりします。この年代なら、下がってから戻るまで待てる時間があります。この待てる時間の長さが、年代によって選び方が変わる理由です。
まず生活費の半年分を預金で確保し、残りを制度の中で積み立てるところから始めるのが、迷いにくい順番です。
ハイパーインフレは来るのか
ハイパーインフレは、物価が短期間に何倍にもなる状態を指します。今の日本の物価上昇とは、桁も性質も別のものです。
2021年
- 前年比
- -0.2%
2022年
- 前年比
- +2.5%
2023年
- 前年比
- +3.2%
2024年
- 前年比
- +2.7%
2025年
- 前年比
- +3.1%
2026年7月
- 前年比
- +1.9%
ここ数年の物価上昇率は、上の表のとおりの水準で推移しています。ここから急に何倍にもなる展開は、今のデータからは読み取れません。
それでも備えるなら、円で価値が決まらないもの、つまり金や外貨、実物資産が候補になります。ただし起きる前提で資産を偏らせると、起きなかったときの機会損失が大きくなります。
あかりよくある質問
よくある質問
インフレ対策として最も効果的な方法は何ですか?
唯一の正解はありません。この5年で最も伸びたのは金でしたが、値動きも大きく、利息も生みません。
少額からでもできるインフレ対策はありますか?
あります。投資信託やREITなら数千円から始められます。
インフレ対策はいくらから始めるべきですか?
生活費の半年分を預金で確保したうえで、残った分から始めるのが目安です。すぐ使うお金まで投資に回すと、値下がりしている時期に取り崩すことになります。
預金は全額投資に回すべきですか?
回さないでください。急な出費や収入が止まったときに使うお金は、値動きのないところに置いておく必要があります。
住宅ローンはインフレ時にどうすべきですか?
物価が上がると、返す金額は変わらないのにお金の値打ちが下がるため、借りている側の負担は実質的に軽くなります。ただし変動金利で金利が上がると、返済額そのものが増えて相殺されます。
外貨を持つことはインフレ対策になりますか?
円が安くなる場面には効きます。ただし円が強くなれば逆に目減りし、円に戻すたびに手数料もかかります。
インフレ対策で節約以外にできることはありますか?
固定費の見直しと、NISAなどの制度(2026年度時点)を使うことです。毎月の固定費を少し削るだけでも、運用でそれと同じ額を稼ぐより確実です。
インフレに強い資産は何ですか?
この5年の実績では、金・株式・マンションはいずれも物価を上回り、普通預金だけが置いていかれました。倍率は記事中の早見表にまとめています。
まとめ
この記事の結論
- この5年、物価は上がり続けた。普通預金はほとんど動かず、置いていかれた
- 金・株式・マンションはいずれも物価を上回った。伸び幅は記事中の早見表のとおり
- 国の利上げでは預金は守れない。先に上がるのは借りる側の金利
- 個人向け国債は、税引前なら物価に勝つが、税引後では負ける
- 借りたお金で買えるのは、6つのうち不動産だけ
手段を選ぶ前に、動かせる金額を知る必要があるためです。
まず確かめること
- 通帳かアプリを開く
- 5年間使う予定のないお金がいくらあるかを数える
- その金額をメモしておく
あかり
あかり